日本獣医麻酔外科学会 2017年東京地区講習会

麻酔って危ないの?
~麻酔・鎮痛法の今を再学習~

2017年(平成28年度)東京地区講習会 開催報告

去る2017年3月12日の日曜日、日本獣医麻酔外科学会2017年東京地区講習会が東京大学弥生講堂一条ホールにて開催されました。 当日は晴天の中多くの参加者(175名)に恵まれ、7社のご協賛も頂き、午前9時半から午後4時半までの時間をかけた濃厚かつ活気のある講習会となりました。

本学会の地区講習会の目的は、日本全国で麻酔および外科に関する知識や知見を啓蒙し、より質の高い獣医麻酔医、獣医外科医を輩出することとされており、 また東京地区では新進気鋭の若手の先生を講師へ抜擢することも命題としております。さらに東京での開催時には地方からご参加される先生方も多く、 より責任も重く、さらに内容の伴った魅力的な講演が期待されています。

今回は、日々の診療において外科治療を必要とする場面は非常に多く、また動物の疼痛についても積極的な治療が望まれることも増え、 おのずと麻酔や疼痛管理の重要性がクローズアップされており、3分野(整形外科、軟部外科、疼痛・麻酔管理)から疼痛麻酔管理をピックアップいたしました。 「麻酔は、効果とともに安全性が第一であり、そのためには基本を学び基本を実践したうえで、考え創意工夫すること」ということをテーマに、 「麻酔って危ないの?~麻酔・鎮痛法の今を再学習」と題し、麻酔前の準備から術後管理までの各ステップにおける総論を網羅しつつ最新のトピックを中心に講演を行いました。

各講師の先生方には座長も務めていただき、各ご講演を50分とやや短めに設定し、より緊張感と集中力を持続しやすくできるようにいたしました。

「術前評価と前投薬:術前ルーチン検査で麻酔事故は防げるのか」では、西村亮平先生(東京大学)を講師に迎え、 術前ルーチン検査では麻酔事故が起こる確率を下げられないという事実といかに術前の問診や身体検査、診察する獣医師の能力が大事であるかということに改めて基本の大切さを、 そして麻酔を行う上で悩むことの多い前投薬から導入薬の選択について、しっかりと学びなおす機会となりました。

「麻酔導入と気道確保:気道確保のための新しいデバイス声門上器具」では、鎌田正利先生(東京大学)を講師に迎え、声門上器具の猫への応用を中心に、 気管挿管についての知識を学ぶことができました。

「麻酔維持と循環器モニター:血圧を測ろう」では、神野信夫先生(日本獣医生命科学大学)を講師に、血圧測定を中心にその測定法からモニタリング時の考察まで、 各種のモニタリングにも触れつつ非常に丁寧で分かりやすい講演を受けることができました。

「術中・術後の呼吸管理とモニター:人工呼吸はどう使う?」では、山谷吉樹先生(日本大学)を講師に迎え、人工呼吸に必要な基本的な知識と最新の人工呼吸時のモニタリングについて、 時に難解になりがちな内容でありながら分かりやすくいろいろな例を取りながら、ご教授いただきました。

「術中・術後の鎮痛:局所麻酔の現状と未来」では、飯塚智也先生(東京大学を講師に迎え、局所麻酔を中心とした疼痛管理について、基礎知識を踏まえながら細部にわたる手技まで、 併せてその進捗と現状を学ぶことができました。特に局所麻酔は、苦手とする先生が多い中にひとつの光明となるような、想いの伝わる講演でした。

最後に「パネルディスカッション:麻酔についてなんでも答えます」と題し、5名の講師の先生方にご登壇いただき、東京地区講習会実行委員会委員長を座長に、 各講演についての質疑応答とともに、事前に募集いたしました質問についての各先生の回答と討論を実施いたしました。東京地区講習会では、 講師だけでなく会場の参加者も参加できるような討論会を目指しており、今回も長い時間をこのパネルディスカッションに充てることで活発かつフランクな討論が行えました。 頂いたご質問は、日常の麻酔における不安や疑問を全て網羅するようなものであり、より専門性の高いものや総論的なもので時間を要するご質問につきましては、 時間の都合上残念ながら全てを取り上げることができませんでしたが、今後の講習会での演題として取り上げていきたいと思っております。

講習会終了後には、講師の先生方と本講習会の実行委員ならびに東京地区委員の諸先生方、お手伝いいただいた東大の研修医や学生さんたちを交えた情報交換会を開催いたしました。 本講習会の反省ならびに改善すべき事項や来年度に開催される2018年東京地区講習会について、また学術的な議論など、内容の充実した会となりました。

最後に今回の講習会が盛況のうちに行うことができましたのも、ご参加いただいた先生方、ご後援いただいた公益社団法人東京都獣医師会一般社団法人様、 東京城南地域獣医療推進協会(TRVA)様、ひがし東京救急動物医療センター様、夜間救急動物病院目黒様、ご協賛いただいたアコマ医科工業株式会社様、株式会社インターベット様、 エランコジャパン株式会社様、シグニ株式会社様、日本光電東京株式会社様、フクダエムイー工業株式会社様、Meiji Seika ファルマ株式会社様、 そして何より貴重なご講演をいただいた講師のおかげと思います。皆様に心からの感謝を申し上げます。

(文責 日本獣医麻酔外科学会2017年東京地区講習会実行委員会委員長 久山昌之)

講習会の様子(写真)は会員サイト内にてご覧になれます。

内容

「術前評価と前投薬:術前ルーチン検査で麻酔事故は防げるのか」 西村亮平 先生(東京大学)
「麻酔導入と気道確保:気道確保のための新しいデバイス声門上器具」 鎌田正利 先生(東京大学)
「麻酔維持と循環器モニター:血圧を測ろう」 神野信夫 先生(日本獣医生命科学大学)
「術中・術後の呼吸管理とモニター:人工呼吸はどう使う?」 山谷吉樹 先生(日本大学)
「術中・術後の鎮痛:局所麻酔の現状と未来」 飯塚智也 先生(東京大学)
「パネルディスカッション:麻酔についてなんでも答えます」 講師の先生方

開催概要

日 時 2017年3月12日(日) 9:30 〜 16:30
場 所 東京大学 弥生講堂一条ホール
文京区弥生1-1-1 東京大学農学部内
交 通 東京メトロ南北線 東大前駅下車/東京メトロ千代田線 根津駅下車
都営バス 東大農学部前下車
主 催 一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
後 援 公益社団法人 東京都獣医師会
一般社団法人 東京城南地域獣医療推進協会(TRVA)
ひがし東京夜間救急動物医療センター
夜間救急動物病院目黒

参加費

  大学教員、大学所属研修医
学生
日本獣医麻酔外科学会会員
獣医師会会員(地域問わず)
後援団体会員
日本獣医麻酔外科、獣医師会
双方の非会員
事前登録 無料 2,000 円 8,000 円
当日登録 2,000 円 4,000 円 10,000 円
ハンドアウト代 2,000 円
  • 参加費にハンドアウト代は含まれておりません。
  • 大学所属研修医、学生の方は所属が証明できるものを当日ご持参ください。

事前登録

パンフレット

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お問合せ

久山昌之(久山獣医科病院)

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